夫婦の危機の前兆・特徴とは?危機を乗り越えるために大切なこと

普段から結婚生活にモヤモヤを抱えていたり、何かをきっかけに相手の考えがわからなくなってしまったり……夫婦の危機を感じるときは、気持ちの擦れ違いが起こっているのかもしれません。縁があって夫婦となったからこそ、ふたりらしい暮らしのために、パートナーとのコミュニケーションを図って小さな不安を解消していきましょう。 異性間のコミュニケーションや、時代における人との関わり方に詳しい佐藤律子さんに詳しく伺いました。

離婚の理由で多い「性格の不一致」はなぜ起こる?



離婚の理由で多い「性格の不一致」はなぜ起こる?

令和4年「司法統計年報」の離婚申立ての動機では「性格が合わない」の項目が最も多く、全体の半数近くです。
※データ出典:裁判所ウェブサイト 令和4年「司法統計年報」第19表 婚姻関係事件数―申立ての動機別

では、どのような状況だと「性格が合わない」と感じやすいのでしょうか?いくつかの例を見てみましょう。

結婚後のライフプランを立てていない


恋の誕生の時期は相手の欠点もよく見えてしまうものですが、良い家庭を築くためのパートナーとして、将来設計や生活のイメージの共有が必要です。

幸せにしてもらえるのを待っている


結婚さえすれば幸せになれるわけではありません。相手に幸せにしてもらおうと受け身でいると、「結婚前よりも尽くしてもらえていない」「こんなはずじゃなかった」と思うことが増えていきます。

結婚前からどちらか一方の考えに合わせている


付き合っているときから「相手の望む自分でいなければ」と自分が一歩引いていると、夫婦の関係になっても相手に合わせて無理をしがちです。無理ができなくなったときに不満があふれ出すかもしれません。

家庭の在り方や仕事観の方針を擦り合わせていない


家事・育児や介護など家庭内での分担、理想の働き方など仕事のことを話し合えていないと、パートナーに対する不服がたまっていきます。

自分の思いを理解してもらえず、イメージと異なる生活を一方だけが我慢したり、無理して頑張りすぎたりしているケースがあります。


“夫婦の危機”の前兆となる夫婦関係の特徴



“夫婦の危機”の前兆となる夫婦関係の特徴

夫婦の危機に発展する「性格の不一致」は、一つの決定的な理由があるわけではありません。コミュニケーションが減り、さまざまな理由が積み重なって、徐々に相手から気持ちが離れてしまうのです。

ここでは、離婚に至る可能性のある関係性の特徴を解説します。

ためた不安をぶつけてしまう


「なんでこんなことするの?」「あれもこれもしてくれない」など、結婚後に相手の行動に腹が立つ場面が増えるのは、お互いに大事にしているものが違うからです。

それぞれが家族のためにと考えて行動している場合でも、不満がたまると感情のぶつけ合いに発展しがちです。例えば、仕事や趣味を通して“自己評価を外から得ること”に重きを置くタイプと、家族や生活といった“内側が満たされていること”を大事にするタイプでは、家庭に対する考え方が異なります。

不満がたまると相手のことを思いやる余裕がなくなり、話し合いも平行線に。批判的な思考にとらわれて視野が狭くなっていきます。

勝ち負けにこだわりすぎる


相手の態度や言葉への違和感が原因でぶつかるのはよくあることです。洗濯や食器洗いのタイミング、掃除の仕方などのちょっとした価値観の違いで意見が対立し、イライラが募ることもあるでしょう。

ささいな理由から発展した夫婦けんかだとしても、自分が折れたくないあまりに相手の人格否定にまで及ぶと、お互いが深く傷つくことになります。

本来、価値観の違いにどちらが正解かなどはありません。相手を許せず感情的になって、相手の意見を論破したい、言い争いに勝ちたいと思うのは、話し合いの放棄です。

対等な関係性を築けていない


「仕事をしているから自分は家事をしない」「仕事をしていない(稼ぎの少ない)自分は我慢するしかない」と、収入の有無によって、家庭内で役割を決める、一方の意見ばかりが通るというケースは少なくありません。

また、相手の性格においても、付き合っているときはリードしてくれる性格が頼もしく素敵に見えていても、家庭に入ると魅力が反転して暴力的だと感じられることもあります。リラックスできるはずの家で、相手の顔色をうかがってばかりいると心身が休まらないでしょう。

本来は対等であるべき関係性に従属の関係性が生まれてしまうと、モラルハラスメント(モラハラ)や家庭内暴力(DV)の引き金になる可能性が高まります。

相互理解を諦めている


一方が話し合いたくても、相手にはぐらかされてしまっては話し合いが成立しません。

夫婦の片方だけがコミュニケーションをとろうと頑張り続けていると、次第に「相手に期待してがっかりするよりも、最初から期待しない方が楽だから」と、やってほしいことをパートナーに伝えなくなり、相手のことを理解しようと思うことも減っていきます。

双方が歩み寄らないままでは、「もう話をするのは疲れた」「面倒だから関係の修復をしたくない」と、ふたりの関係はどんどん冷えていきます。

愛情表現の変化を受け入れられない


結婚前は恋人をつなぎ止めるために、相手の願いを聞いたり、気分を察して行動したりと熱心に愛を表現していても、結婚して時間がたつと恋愛の熱は落ち着いてきます。

代わりに身内だからこそ見せられるリラックスした姿をさらけ出すようになりますが、それを「自分はもう大切にされていない」と寂しく感じる場合もあるでしょう。


“夫婦の危機”を乗り越えるために大切なこと



“夫婦の危機”を乗り越えるために大切なこと

自分の考えをパートナーにわかってもらえなかったり、相手の考えを理解しようとしなかったりすることが続くことによって、「性格の不一致」に結びついてしまいます。

ここからは、別れの危機を乗り越えるために、夫婦のコミュニケーションにおいて大切なことを見ていきましょう。

自分の幸せは自分でつくる


夫婦を長く続けるには、「ひとりでも幸せ、でもあなたがいるともっと幸せ」という自立の精神を持ちましょう。「結婚はゴールではなく、幸せはふたりでつくっていくもの」と価値観を変えていくことが大切です。

パートナーに幸せにしてもらおうとするのは依存の関係にあり、相手の対応によって気持ちがアップダウンしてしまうため、自分の感情をコントロールできません。

夫婦が対等の関係だと意識して、お互いが幸せでいられるようにと考えることにより、一方的でない愛情が育まれます。

お互いのできていることに目を向ける


パートナーに不満を感じるとき、無意識に他の家庭と比べてしまっている場合があります。ですが、「隣の芝生は青い」ということわざがあるように、他の人には自分たち夫婦の良い点が見えていることでしょう。

相手にやってもらえて嬉しかったことをメモに書き出すなどして、自分たち夫婦の不足している部分ではなく、できている部分に目を向けましょう

できていることに意識が向くようになると、パートナーの素敵なところが客観的に見えてきます。

相手の考えを決め付けず、自分の気持ちを伝える


ふたりで家事ができると助かると思っているのに、「頼むときっと面倒くさがるに違いない」「察してくれないのはやる気がないから」と推測して、結局すべて自分でやってしまうこともあるでしょう。ですが、相手の考えは聞いてみないとわかりません。

「きっとやってくれない」と決め付けずに、素直に「やってほしいな」「お願いしてもいい?」と聞いてみましょう。相手は、面倒くさいのではなくて、ただ気が付いていないだけかもしれません。

また、出来栄えがどうであれ、やってもらったことに対しては「ありがとう」と感謝を伝えることも忘れずにいましょう。期待に応えてくれないと嘆いたり意地を張ったりするよりも、良い関係性をつくれます。

お互いの変化を許す


恋人でいた頃は気を使ってくれていたのに、夫婦となった現在は、愛情がうせたかのように全く違う人のようだと寂しく感じることもあるかもしれません。しかし、結婚によって安心感を得たことによって、お互いに変化した部分があるはずです。

パートナーからはあなたも以前と変わったように見えているかもしれません。相手にどのような態度で接しているのか、言葉や身だしなみを気遣っているかなど、客観的に振り返ってみるのも大切です。

ふたりの変化を受け止めて、現在の自分たちだから築ける夫婦関係を目指しましょう。「しばらく相手の笑顔を見ていないな」と思ったら、まずは「おはよう」「いってらっしゃい」などを言うときに自分から笑いかけてみるなど、小さなことから始めると良い循環が生まれます。

お互いを尊重し合う


ひと昔前まで、男は仕事を第一にする、女は家庭を守るという考え方がありましたが、現代の結婚では、家庭での役割を一方に押し付けず、得意不得意に合わせてふたりでシェアするという考え方にシフトしています。

夫婦が無理なく心地よい関係性を築くために、その人らしさを応援し、お互いを高め合える関係性をつくることを意識しましょう。

ふたりが居心地の良い状態を知るために話し合うことで、お互いの仕事観や家庭観、休日をどう過ごしたいかを擦り合わせられます。相手と自分の考え方の違いを尊重し、感謝の気持ちを伝え合える関係を築いていきましょう。


夫婦としてお互いを思いやれる関係を目指そう



夫婦としてお互いを思いやれる関係を目指そう

結婚生活は、順調なことばかりではありません。中でも、夫婦関係の悩みは、ひとりではないのに、ひとりでいるよりも孤独を感じてしまうこともあるでしょう。自分だけで抱え込むと視野が狭くなるため、夫婦の危機だと感じたら、まずはお互いの本音で話し合う時間をつくりましょう。

それでも解決しなければ、信頼できる友人にただ話を聞いてもらうと気分がすっきりします。第三者に頼るなら、夫婦そろって心理カウンセラーに傾聴してもらうという選択肢もあります。プロならではのフラットな目線でのアドバイスがもらえるでしょう。

結婚相手とじっくり話し合う、できるだけ客観的な視点で関係性を見つめ直すなどの決断を通して、自分たちらしい家庭の在り方やふたりの幸せを求めていきましょう。


取材・文/みつり


【監修】
佐藤律子さん
一般社団法人異性間コミュニケーション協会代表理事。恋愛、婚活、夫婦問題、子育て、ハラスメント、マネジメント、女性活躍、LGBTQなど人間関係についての専門協会として、認定講師100名以上が在籍する。自治体婚活イベントのカップル成立率60%以上、異性間コミュニケーション研修の受講者は延べ5万人を超える。2024年3月21日に9冊目の最新刊『大人婚活完全ガイド』(ビジネス社)が発売、他著書多数。テレビ番組の恋愛・結婚コーナーの監修、出演実績も豊富。
(協力:異性間コミュニケーション協会トップ認定講師 武市梨絵さん)
公式サイト:https://www.iseikan.or.jp/